勇者様と恋人宣言―アラサー勇者は恋がしたい―

5秒悩んでイレーネは意を決したように頷く。

「とりあえず、ルーナ! この剣を隠すわよ!」
こうなると頼もしいのがイレーネだ。


部屋に帰って早速作戦会議。


「今、広場に戻してくるのは?」


「バカ! もう広場には人がいる時間よ!
もしも戻しにいったら、わたしがやりましたと言ってるようなもんよ!
今は隠す。夜中返す。これでばっちりよ!」


「そんなにうまくいくかしら? まあ、それしか思いつかないけどさ」
私は不安になりながら、聖剣に布を巻き付けた。

杖を買ったときに付いてきた、杖を持ち運ぶときにまく布だ。
少しは目眩ましになるだろう。


「部隊長に見つかる前に武器庫に隠すしかないわね。
アンタ、魔法使いなのに剣なんて持っていたらおかしいでしょ?」


「確かに……でも、あの人はお馬鹿だから大丈夫じゃないかしら?」

「馬鹿だからよ。あの筋肉馬鹿、常人じゃ何やるか分からない」


軍は幾つかの部隊に分かれている。
その中でも私とイレーネは魔法使いが所属する部隊に入っている。

そして、部隊長は魔法使いの部隊の長なのに、何故か身体を鍛えまくっているマッチョの筋肉馬鹿なのだった。


「そういえば、この前、魔物を素手で倒したって言ってたわ。魔法使いなのに……」


「一昨日も、城内に忍び込んだ賊を倒したらしいよ、素手で。魔法使いなのに……」
イレーネは溜め息をつく。