勇者様と恋人宣言―アラサー勇者は恋がしたい―

「食料泥棒?」
私は力が抜けてその場にしゃがみこんでしまった。

金品を狙う泥棒じゃなかったんだ。
じゃあ、剣も大丈夫なわけだ。
なんて人騒がせな話なんだ。


「よかった……」
ぽつりと独り言が漏れた。


「よかったって?」
アルバートが私の顔を覗き込んで尋ねる。


「いや、だって……」
私がそう言いかけたときだった。

「あー!」
イレーネが思いきり大声で叫んだ。


「あー!」
アルバートも自分の手を見て叫ぶ。


アルバートが掴んでいた青年がいない!

とおもったら、少し離れた窓枠に片手をかけ、もう片手をヒラヒラと振っていた。


「サンキュー逃がしてくれて!」
そう青年は叫ぶと窓から飛び降りていた。


どんなコントだよ!
私は心の底で突っ込みながら、追いかけようとするが、下を見たときにはもう姿はなかった。