勇者様と恋人宣言―アラサー勇者は恋がしたい―

「離せ、デカブツ! 巨人!」

男の子は暴言を吐きながら暴れるが、アルバートは涼しい顔をしている。

そりゃあ体格が違うもの。しかたないわ。


男の子は私より身長が低く、華奢な体つきをしていた。

かたやアルバートは2メートル近くある大男なのだ。


「で、これはどういうこと?」
暴れる男の子を抑えながらアルバートは聞く。


私はそこで初めて男の子をしっかりと観察した。

華奢な体つきから男の子ーー15歳くらいの少年かと思ったが、顔つきは大人びている。
もう少し上、おそらく20歳ぐらいだろうか。
男の子や少年というより青年と言った方が正しいように思えた。

麦わら色の髪は短く刈りそろえられ、赤銅色の肌をしている。
つり目で生意気そうな顔だ。服装もやたら汚い。
第一印象は最悪だ。


「泥棒よ!」
イレーネは床が抜けんばかりに足を踏み鳴らす。
完璧にぶちぎれている。


「え!」
私は心底驚いていた。
だって、本当にアルバートが泥棒だと思っていたから。


「ちが、違わないけど!」
生意気そうな青年はなおも暴れる。


「食材漁りも立派な泥棒よ! コイツ、食料庫から色々盗んでたみたいなの!」
イレーネは腕を振り回して怒る。