ヴィクトールの返事を待たず、私は駆け出した。
「ちょっと、お前、待てよ!」
「待たない! まかせたわよー」
そう、返事を待っていたら、おそらく「ノー」であることはわかっていた。
しかし、置いていってしまえばこちらのモンだ。
奴の性格上、こんなに疲れきったご婦人を置いてなどいけないだろう。
奴は私以外にはとても優しい男だ。
「ルーナはアナタに任せると言ってるのよ? いいチャンスよ」
イレーネはヴィクトールにそう意味ありげに笑うと、私を追いかけた。
ヴィクトールはついてこなかった。
二日酔い気味の私は失速していく。
それにイレーネが追いつく。
「やばいよ、もしも泥棒があれを見つけたら」
イレーネは眉をひそめ、囁く。
「さすがの私でも、ちょっと後悔。焦ってる」
私も声を小さくする。
「あ、逆に、泥棒が剣を抜いたことにしちゃえば?」
「え、泥棒を勇者にしちゃう? それはさすがにまずいんじゃない」
「そうよね、泥棒が英雄と同列に語られるのはちょっとまずいよね。
じゃあ、やっぱり泥棒を捕まえてしまうのが一番ね」
イレーネの言葉に私は力強く頷く、が。
「……でもね、私……吐きそう…」
猛烈な吐き気に走るペースは急激に落ちる。
「もう! 先に言ってるわよ」
イレーネは左手に持っていた杖を投げる。
すると杖は座るのにちょうどいい高さあたりで浮く。
イレーネは赤毛を揺らし、杖に飛び乗った。
「見つけたら捕まえとくわ」
そう言うと、杖は部隊長の早さと同じようなスピードで飛んでいった。
「その手があったか……なんで、杖を忘れた、私」
私はのろのろと倉庫へ向かった。
「ちょっと、お前、待てよ!」
「待たない! まかせたわよー」
そう、返事を待っていたら、おそらく「ノー」であることはわかっていた。
しかし、置いていってしまえばこちらのモンだ。
奴の性格上、こんなに疲れきったご婦人を置いてなどいけないだろう。
奴は私以外にはとても優しい男だ。
「ルーナはアナタに任せると言ってるのよ? いいチャンスよ」
イレーネはヴィクトールにそう意味ありげに笑うと、私を追いかけた。
ヴィクトールはついてこなかった。
二日酔い気味の私は失速していく。
それにイレーネが追いつく。
「やばいよ、もしも泥棒があれを見つけたら」
イレーネは眉をひそめ、囁く。
「さすがの私でも、ちょっと後悔。焦ってる」
私も声を小さくする。
「あ、逆に、泥棒が剣を抜いたことにしちゃえば?」
「え、泥棒を勇者にしちゃう? それはさすがにまずいんじゃない」
「そうよね、泥棒が英雄と同列に語られるのはちょっとまずいよね。
じゃあ、やっぱり泥棒を捕まえてしまうのが一番ね」
イレーネの言葉に私は力強く頷く、が。
「……でもね、私……吐きそう…」
猛烈な吐き気に走るペースは急激に落ちる。
「もう! 先に言ってるわよ」
イレーネは左手に持っていた杖を投げる。
すると杖は座るのにちょうどいい高さあたりで浮く。
イレーネは赤毛を揺らし、杖に飛び乗った。
「見つけたら捕まえとくわ」
そう言うと、杖は部隊長の早さと同じようなスピードで飛んでいった。
「その手があったか……なんで、杖を忘れた、私」
私はのろのろと倉庫へ向かった。
