「嫌な空気ね」
ミレイは頬杖をついてふぅーと息を吐き出した。心の中に積もったどんよりとした気持ちも一緒に出すように、ミレイはもう一度息を吐いた。今、ミレイとアドルフ、レレナ、スカーレット、ジェイドは生徒会室に居た。みんな、いい加減、体育館で一日を過ごすのに疲れてしまったので息抜き代わりに集まったのだ。
「そういえば、スカーレット。リベレイションが攻めて来た時、何処に居たの?」
ミレイは頬杖をついたまま視線だけをスカーレットに向けた。スカーレットはみんなから離れた位置に腰を下ろし、ぼんやりとしていた。ミレイに声をかけられたスカーレットは視線をミレイに向けた。ミレイが問うているのはスカーレットがラ・モールに乗って出陣していた時のことだ。
「そう言われると確かにスカーレット、体育館で見かけなかったな」
「ジェイドさんは見ましたけど、私もスカーレットさんは見ませんでした」
アドルフとレレナも、其の時の状況を思い出して、話にのってきた。スカーレットは非常時によく見ているなと思った。
「教室」
「攻撃を受けている中(と、言っても学校は攻撃をされてはいないが)単独行動は感心しないわね。其れに生徒会メンバーの中では一番の重症者なんだから万が一敵が入って来た時は真っ先にやられるわよ」
其の一番の重症者戦地のど真ん中でドンパチやってたんだけどねとスカーレットは心の中で呟いた。
「何処に居たって同じですよ。戦える武器があるわけではないし、戦える人間が居るわけでもないですし」
「一理あるわね」
ミレイは自分の意見をあっさり引き下げた。此処で言い争っても仕方がないし、スカーレットの言っていることは本当のことなので反論できなかったも理由の一つだ。
「なぁ、何もすることないし、イベントととかしたいなぁ」
重苦しい空気を払拭するかのようにアドルフは意識して明るく言った。
「戦時中に何を言っているんですか?」
アドルフの言葉にジェイドは心底呆れていた。
「でも、こんな時だからこそいいのかもしれないわね」
体育祭や文化祭をして、みんなで盛り上がっていた頃を思い出し、懐かしむように言った。
「私、今年卒業だから此の学校でイベントをできるのは今年が最後なのに」
「大丈夫ですよ、会長。今は戦争中で、学校は機能していないので此のまま行くと全校生徒、仲良く留年ですね」
スカーレットは満面の笑みで言った。全ての毒を洗い流すように無邪気な笑みで。