戦慄のクオリア

「歪だな」
仲間に囲まれるスカーレットを見ながらエヴァネンスはぼやいた。
「何か言ったか、エヴァネンス」
「いや、何も」
隣に居たスーシェンはエヴァネンスが何か言ったような気がしたが違ったようだ。周りから泣き声とかも聞こえるので、聞き間違えてもおかしくはない状況だ。スーシェンはエヴァネンスの嘘をあっさりと信じた。
「しかし、いつまで此処に居ればいんだ」
スーシェンの文句はもっともだとエヴァネンスは思っていた。軍人である彼はこんな所に留まるよりも早く戦場に出て、戦いたかった。
「ruinを何とかしないとダメか」
スーシェンは隣でいろいろぼやいていたがエヴァネンスの耳には既に入っていなかった。彼は軍人として此れからの戦場の流れについて考えていた。自分がいつ戦場に出られるのか。エヴァネンスの頭には其れしかなかった。


「ラスール帝国との話し合いはまだ終わらないのか、アダーラ」
客室に用意された長椅子に腰を落ち着かせることなく、部屋の中を行ったり来たりしている青年は見るからにイライラしていた。彼はイカルガ王国第一王子のアルフォード。アルフォードはruinを一度だけラスール帝国に投射してから全く動こうとしないリベレイションの連中に腹を立てていた。
「ラスールが無条件降伏するまでruinを投射すればいいだけだろう。何をしているのだ」
「しかし、そんなことをすればラスールは完全に滅んでしまします」
物騒なことを当然のように言うアルフォードをアダーラは何とか宥めようとしていたが、アルフォードはより一層憤慨した。
「其れがどうした!ラスールは僕の父を殺しただけではなく、僕とお母様を国外追放したんだぞ!僕は生まれて初めてだ、こんな侮辱を受けたのは」
「なら、ruinで瞬殺するよりも生け捕りにして、嬲り殺してはどうです?」
アダーラの物騒な言葉にアルフォードの怒りは簡単に収まった。
「其れもそうだな。侮辱には侮辱を持って返す。うん。悪くはない」
なんて単純な王子だ。と、心の中で馬鹿にしながらアダーラは人の好い笑みを浮かべた。
「では、私は其の為の準備をしてきます」