「私達も行こう」
「姉さん」
ジェイドはスカーレットの怪我のことを気にしていた。できれば休んでほしかった。ジェイドにとって他の生徒の怪我なんかどうでもいい。一番気にしていることはスカーレットの状態だ。
スカーレットもジェイドが自分のことを気にしていることは分かった。だから、ジェイドの頭を撫で、「大丈夫だ」と笑ってみせた。
スカーレットも怪我をしている。ジェイドが手当てしてくれたといっても痛みが全くないわけではない。動けば痛みがやってくる。だが、スカーレットはグレンから命令が来るまでは待機。特にすることがない。何もしないというのは今の状況では嫌なので、スカーレットも怪我人の手当てをすることにした。
スカーレットが「する」と言っているのでジェイドに止めることはできない。仕方がないので。ジェイドも付き合うことにした。

ヴァイナー歴五九八年 ロスロンの月 第二四番目
世界で初めてruinが投射された。此れを機に世界を巻き込んだ大戦乱が始まることになる。其の始まりとなった此の日を後に始まるシエディアオ歴で「業火の日」と呼ばれるようになる。


日常はいつも一瞬にして消え去る。
失って初めて人は気づくことができる。日常の幸福さを。
どうして人は失わないと気づくことができないのだろう。
気づく時にはいつだって手遅れ。日常は既に壊された。
同じ血の通った人の子の手によって。
さぁ、人間達よ、立ち上がれ。其の身を血で染め上げろ。
其の心を憎しみで塗り固めろ。
其れがお前達の此れからの生き方だ。罪人に相応しい罰だろう。