笑いの波が過ぎ去ったのか、不動さんは最初の事務的な声と表情に戻った。

イケメンのポーカー・フェイスは迫力がありすぎて、ちょっと近寄りがたい雰囲気になってしまう。

さっきみたいに笑っている方が、ぜんぜんいい感じなのに……。

「じゃあ、そう言うことで、月曜からお願いします。何か質問はありますか?」

「あ、はひ。特にないれす」

まだ止まりきらない鼻血を、ティッシュで押さえながら答える。

「では、これで……」

そう言って不動さんがソファーから立ち上がりかけたとき、デスクの上にある電話が鳴った。

外線ではなくて、内線の『プープー』という呼び出し音だ。

「ちょっと、失礼」

席を立って、電話に応対する不動さんの姿を何となく目で追う。

「どうかしたのか?」

電話に出た不動さんは、受話器を耳に当てて相手の話を無言で聞いている。

何か、仕事のトラブルでもあったのか、徐々に、彼の周りの空気がピリピリと張りつめていくのがわかった。