「失礼しま~す」
若干怖々と声を掛けながら、『従業員専用出入り口』と書かれた白いプレートが付いている、シンプルなブロンズ色のスチールドアを開けて中を覗き込む。
無機質なグレー・トーンの廊下、と言うより『通路』と呼んだ方が良さそうな狭い廊下には、全く人気がない。
「あの~。すみませ~ん」
声を掛けるが、応答なし。
入り口って……ここじゃないとか?
建物の表に回って、フロントの受付の人に尋ねた方が良いだろうか?
でも、普通に考えて面接にきた人間、
つまり従業員予備軍が、お客様と同じところから出入りしてはまずい気がする。
だから、『従業員専用出入り口』から入って、正解だと思うんだけど、
あまりの静けさに、本当にここが面接会場なのかと、心配になってきた。
確かに、駐車場の看板には『(株)FUDOU』の名前が入っていた。
でも、もしかしたら同じ名前の別の会社だとか、他に事務所があるんじゃないかとか、色々な可能性が脳内をグルグル回る。
チラリ。
腕時計に視線を走らせると、三時五十五分。
――うわっ、やばっ!
あれだけ余裕を見て遅刻した日には、目も当てられない。
とにかく、人を捜そう。
私はそのまま、キョロキョロと、人気の無い廊下を奥へと足を進めた。



