「ひゃっ、降ってきちゃった!」
慌てて車に滑り込んだものの、雨の落ちてくる速度には敵うはずもなく。
せっかくの髪のセットもグシャグシャで、お気に入りのネイビーブルーのパンツスーツも濡れてしまった。
――あーあ。
ハンカチで濡れた髪と服を拭いながら、バックミラー越しに自分の顔を覗きこんで、思わず渋面をつくる。
さらに勢いが強くなった雨粒が、パタパタと派手な音を立てて車のボディを叩く。
私は、エンジンをかけてワイパーを動かした。
拭き取られたフロントガラスの向こうの空は、まだ昼間だというのに、まっくらだ。
『暗雲たれ込める』とは、こんなのを言うんじゃないだろうか?
胸によぎる一抹の不安に、眉をよせる。
――なんだかなぁ。
思えばそれが、これから体験する、『素敵な面接』の予兆だったのかもしれない。



