婚約を破棄された件は、正直言えばかなり辛かったし、大きなダメージを受けた。

結局、父には、面と向かって婚約破棄されたことを言えずに、手紙で伝えることにした。

『高崎さんとは、別れました。ごめんね』

たったそれだけの、短い手紙。

大好きな人に、

大好きだった人に、私よりも大切な女性が存在した。

その上、その女性のお腹の中には、既に新しい命が宿っているという衝撃すぎる事実。

ただでさえ会社のことで心労が重なっているはずの父に、更に追い打ちをかけるようなことは教えたくなかった。

でも、正式に婚約を交わしている以上、黙っているわけにもいかない。

理由を書かなければ、父は、自分のせいだと自分自身を責めるかもしれない。

そういう心配はあった。

それでも、まだ、結果のみを伝えた方が、よけいな心の負担をかけずにすむような気がした。