「エレベーターでは失礼したわね。いつも、あんなことしている訳じゃないのよ」

「え、あ、その……いいえ、こちらこそ。お邪魔しちゃって」

薫さんにニッコリ笑顔で言われて、どんな顔をしたらいいのか分からず、どぎまぎしてしまう。

この人、近くでみるとますます綺麗だ。

透き通るような白く滑らかな肌は、シミ一つなさそう。

理知的で、それでいて優しさをたたえた、くっきり二重まぶたのダークブラウンの瞳は、長いまつげに縁取られている。

高い鼻梁。

少し肉厚の、形の良い唇。

それらが、まるで美の女神に愛でられたような絶妙な間隔で、これまた形の良い顔の上に配置されている。

メリハリのあるモデル並のスタイルなんかは、もうため息もので。

おまけに、職業はお医者さまと来ている。

『美しい女(ひと)』って、きっとこういう女性のことを言うんだ。

ここまでの完璧さを見せられると、羨ましいなんて感覚は、不思議とわいてこない。