微かなタバコの臭いと、カーラジオから流れる音楽。

運転手のお父さんは、楽しそうに鼻歌を歌う。

助手席には、笑顔のお母さん。

幼い私は、お父さんの鼻歌を子守歌に鯨さんに乗って空を飛ぶ夢を見る。

ゆらゆら、ゆらゆら。

ふわふわ、ふわふわ。

また、乗りたいなぁ。

お父さんのダンプカー。

鯨さんの寝台席で眠りたい。

お母さんの手作りのお弁当を持って。

お父さんと、お母さんと、私。

三人で、『お仕事』に、行きたい――。

『茉莉――ん』

――う……ん?

お母さん?

『茉莉さん』

私、まだ眠いの。

もう少し、寝かせて――。