気持ちいいお風呂で手足を伸ばして、髪は社長自ら乾かしてもらって。

 美味しいごはんに、お口あーんでエビチリを食べさせてもらって。

 お腹もいっぱい、幸せいっぱい。

 そのうえ、このベッドの寝心地のよさったら、もう私に眠れっていってるようなもの。

 ああ、これで眠れたら、もう何もいらない。

 なんて、うつらうつら考えていたのが最後の記憶で、私の意識は眠りの底へと吸い込まれていった。

 夢を見ていた。

 幼い私は、母の『おはなし』を聞いている。

 ベースの物語はシンデレラ。でも、このシンデレラは、けなげだけど強かった。

 自分から魔法使いのおばあさんを探し出し、ずっと片思い中だった王子様に会えるお城の舞踏会に行けるように魔法をかけてもらうのだ。

 依頼料は、亡き母親から『困ったときに使いなさい』と渡されていた高級ブローチ。

 魔法使いのおばあさんは美しいブローチに目を輝かせて、二つ返事でシンデレラに魔法をかける。

 そう、このシンデレラは自分の力で、王子様に会いに行くのだ。

 他人から施されるのを待つのではなく、自分の力で運命を切り開いていく。