私の隣に歩み寄ってきた社長は、鏡に映る私の全身を、といっても腰から上のバストショットだけど、まじまじと見つめた。

 恥ずかしさで、一気に顔に血がのぼる。

 だって、バスローブの下は、すっぽんぽんだ。

「ど、どうしたんですか? 社長もお風呂はいりますか? すごく気持ちいですよっ!」

「髪を乾かしてやる」

「……ふへっ?」

 髪、って、私の髪を社長が乾かすんですか?

 何故に?

「頼んでおいた食事が届いた。冷める前に食べたいから、時短のために俺が乾かす」

 ああなるほど。食事が届いたのか。
 
「あの、先に食べてくださっても……」

「カップルは普通、二人で食べるものだ」

 そうか。あくまでホテルを利用するカップルとして、チェックをしたいんだな。そう理解した私はこくりと頷く。

「あ、はい、お願いします」

 でも、これが意外に恥ずかしいことに、髪を乾かし始めてすぐに気付いた。

 社長の少し冷たい指先が、頭皮や首筋に触れるたびに、ビクッと肩が跳ねそうになってしまう。

 以前は、美容室で男の美容師さんにシャンプーをしてもらうこともあったけど、それとは全然違う。

 気持ちいいことはいいんだけど、恥かしさの割合の方が断然多い。

 は、恥ずかしい。

 早く終わってーーーっ!

 鼓動はドキドキ跳ね回り、顔はまずます赤く上気して、髪が乾きあがるころにはすっかり私の顔は完熟トマトと化していた。