「ありがとうございます。何か、冷たいジュースでも取ってきますね」

 二人分持ってくれば、社長も飲んでくれるだろう。

 そう思った私は、応接セットのすぐわきの壁際に設置されているドリンク類の自動販売機を覗き込んで、片開きのガラスの扉を開けた。

 そしてすぐに走った違和感。

 ドリンクの自動販売機なら、扉を開けたとたん冷気が流れ出すはず。

 でも、この自動販売機からは冷気を感じない。

 もしかして電気が通っていないのかと首を傾げながら、目を凝らすと自動販売機の中に入っているのはジュース類ではなかった。

 十センチ角くらいに仕切られた庫内には、透明な袋でラッピングされている『得体が知れないカラフルな何か』が入っている。

 なんとなく、ラッピングの中の質感が布っぽい気がするから、ハンカチかハンドタオルの部類かなとは思う。

「どうした?」

 もたついている私が気になったのか、ソファーに座ったままの社長から声がかかった。

 でもなぜか、心なしか声が震えている気がする。 

「これ、ドリンク類の自動販売機じゃなくて、なんかよく分からないモノが入っていて……」

 少しの沈黙の後、「そうか」と答えた社長から、またまた日頃の俺様っぷりからは想像できない優しい言葉が飛んできた。

「なんでもいいから、気になったやつを一つプレゼントするから、選んで良いぞ」

 プ、プレゼント!?

「私に下さるんですか!?」

「……ああ。なんなら、二つでもいいぞ」

 うわぁ、もしかして、社長からの初プレゼント?

 さっきの気づかいといい、プレゼントといい、どうしちゃったの社長!?