社長の隣りへ小走りで行くと、おもむろに手を繋がれた。
それも指と指をからめあった『恋人つなぎ』だ。
社長の長くて少し冷たい指先に『ぎゅっ』と自分の指を握りこまれて、瞬時に頬に熱がこもる。
手、初めて手を繋いでしまった。
気恥ずかしさと嬉しさで、思わずへにゃりと頬の筋肉が緩んでしまう。
いや、これは仕事だから!
自分に言い聞かせるも、嬉しいものは嬉しいのだから仕方がない。
お手て繋いで入り口の自動ドアから一歩足を踏み入れれば、そこに広がっているのは中世のお城、ではなく予想外に近代的なホテルのフロントだった。
我がホテルクロスポイントのフロントは、お客様が料金を支払うために必要な最低限のスペースを確保して視界を制限する作りになっている。
これは、ラブホテルという性質上お客様の顔を見ないために配慮したもの。
でもこの愛の城のフロントはまったく正反対だった。
普通のホテルのようにカウンターがあるだけで、視界はフリー。
そこに普通のホテルの従業員のような制服を身にまとった女性が、にこやかなビジネススマイルを浮かべて立っていた。



