こ、これは、陰で美由紀大明神の見えない力が働いたとみるべきか。
「あ、あははは……」
いや、偶然だよ、偶然。
今は就業時間内。
これは立派な仕事なんだから、やましいことなんかこれっぽっちもない。
なんて言い訳は、駅から少し離れた場所にそそりたっている存在感がありすぎる建物を視界にとらえた瞬間に、きれいさっぱり吹っ飛んだ。
夕日を浴びて異彩を放っている建物の名はズバリ、『愛の城』。
思わずあんぐりと口を開いてしまった私の目の前には、赤・紫・ピンク。暖色系のきらびやかなネオンに彩られたまるで中世のお城のような外観を持ったラブホテルが建っていた。
社長はためらう様子もなく、車をお城の中へと進めていく。
駐車場に車を止めれば、あとはホテルの中に行くしかない。愛のお城の中に社長とふたりで入っていく。その絵面を思い浮かべてドキドキと鼓動が早まっていく。
「ほら、行くぞ」
「は、はいっ!」
エンジンを切って黒いビジネスバックを手に取り、さっさと車を降りてしまった社長に発破をかけられた私は、慌ててシートベルトを外した。



