翌日の日曜日の夕方五時。

 出勤した私は、日課になっている仕事始めのコーヒーを入れて、社長室にいる社長に持って行ったときに、おずおずと口を開いた。

「あの、お話があるんですが……」

 今日は外出の予定は入っていないから、このまま社長の書類作りのお手伝いをすることになっている。

 呼ばれない限り、社長室に他の社員が入ってくることはまずないから、例の話をするなら今がチャンスだ。

「うん?」

 コーヒーを美味しそうに一口口に含んだ後、応接セットのソファーに座る社長は、お盆を胸に抱えたまま傍らに立つ私の方に視線を上げた。

 視線と視線がまっこうからぶつかり、後ろ暗いことがある私は思わず目が泳いでしまう。

 や、やっぱり無理だ。

 せっかく計画を考えてくれた美由紀には申し訳ないけど、私にはハードルが高すぎる。

「あ、いえ、なんでもないです」

 くるりと向きを変えて給湯室に向かおうとすると、社長が「俺の方で話がある」と、自分の右隣のソファーを座れとばかりにトントンと叩いた。

「はい?」

 何事だろうと首を傾げながら、言われるまま社長の隣に心持ち社長の方へ体を向けて浅く腰を下ろした。