「もしかして、私から、アプローチしろって言ってる?」

「うん、言ってる」

「恋愛スキルが乏しい私にどうしろと?」

 確かに以前婚約者はいたけど、だからと言って恋愛上手かと言えばそれは違う。

「食事でもデートでもいいから、ねだってみたら? 茉莉に言われれば、兄貴は断らないと思うよ」

 ねだる? ねだるって、どうやるの?

 経験がないから、どんなタイミングでどんなふうに言えばいいのか全くわからない。

「うーーーん」

「ほら、せっかくラブホテルが職場なんだから、一部屋貸し切ってお泊りデートとかしてみたら?」

「無理無理無理、無理だからそれ!」

 お掃除する人たちが同僚のラブホテルで、私にいったい何をしろと!?

「クロスポイントが嫌なら、他のホテルでもいいじゃない? ほら、他のホテルを見て勉強したいとかなんとか言えば、兄貴もその気になるって」
 
 確かに、勉強したいと言えば社長は連れて行ってくれそうだけど。

「それって、本当に見学だけして帰ってきても……」

「いいわけないでしょ。あの朴念仁(ぼくねんじん)にガンガン、アタックするの。なんなら押し倒せ。この妹が許す!」

 押し倒せって……。

 言ってることがだんだん過激になってるよ、美由紀ちゃん。

「あはははは……」

 かくして、私は美由紀に約束させられてしまった。

『他のラブホテル見学という名のデート計画』の遂行を。