さすがにお昼時。

ホテルの展望レストランのランチは結構な値段がするはずなのに、サラリーマンやOLとおぼしき人たちで満員御礼状態だった。

「申し訳有りませんが、ただ今満席で……」

と言いに来たウエイトレスさんに、高崎さんと待ち合わせだと告げると、話が通っているのかすぐに案内してくれた。

一番見晴らしが良い窓側の席。

私たちの婚約の会食に使った、正にその席だった。

グレーの背広とネクタイ。

銀縁のメガネを掛けた、落ち着いた雰囲気の理知的な男性。

『高崎さん』の姿を見付けて、私は心が躍った。

――だって。

ここしばらく『仕事が忙しい』ってろくにデートも出来なかったんだから。

顔もニヤケようってものよ。

それに、正直言うと、これからのことも色々と相談したかったし。

彼なら、きっと良いアドバイスをくれるに違いない。

そう、思っていた。