祐一郎さんの広い胸板に頭を預け、星空を見上げてしみじみと考える。

お父さんの会社が倒産して、路頭に迷いそうになって。

大学も退学の危機で。

信じていた婚約者にはこれ以上ないってくらい、最悪の状況で裏切られて。

お母さんの思い出が詰まった大切な家を手放して。

それでも、前向きにがんばろうって思ってきた。

だけど、心の中には前向きな白天使茉莉のほかに黒悪魔茉莉が住んでいて、前向きになろうって思ういっぽうで、「どうして私ばかりがこんな目に合うの?」って「なんて理不尽なんだろう」って、そんな後ろ向きな気持ちがあったのも確かだ。

でも今は、つらい出来事も全部こうして幸せな今に繋がっているんだと、そう思えるようになった。

それも、ぜんぶ、祐一郎さんのおかげだ。

祐一郎さんに出会えてよかった。

祐一郎さんを好きになれてよかった。

そして、祐一郎さんも、高崎さんとのこともひっくるめた『今の私』を好きだと言ってくれる。

「私って、果報者だぁ……」

「なんだよそれ?」

しみじみとつぶやけば、祐一郎さんはプッと吹き出した。