唖然としている私をよそに、祐一郎さんは湯船のお湯のスイッチをポンといれると、怒涛のようにお湯がたまっていく広い湯船に腰を下ろした。
「ほら、早くこないと風邪ひくぞ」
おいでおいでと手招きをされて、私はうろたえた。
空調は効いているから冷え込むほどではないけど、やっぱり裸同然のこの格好では肌寒い。
かといって、さすがに二人でお風呂に入るのは、羞恥心が邪魔をする。
「ほーら。バスタオルを巻いてもいいから、早くこいよ。あ、来るとき洗面所の電気は切ってきて」
譲歩の言葉に『それなら』と、バスタオルを巻いてから下着を外して脱衣かごに他の服と一緒に畳んで入れる。
脱衣所になっている洗面所の電気を落とせば、周囲はお風呂からの淡いブルーの光に包まれた。
「おじゃまします……」
おずおずとお風呂場に足を踏み入れると、「こっちこっち」と手を引かれて、あろうことか祐一郎さんに背を預けた形で抱っこされてしまった。
うわー、うわー、うわー。
祐一郎さんの太ももが、腹筋が、胸板がっ!
背後から伝わる生々しい感触に心臓が口から飛び出しそうになり、思わず体を前に倒せば「こら、それじゃ、肝心の星空が見えないだろうが」と、胸の下に腕を回して体を起こされた。
上向いた瞳が、満天の星空をとらえる。
背中には、優しい温もり。
じゃぶじゃぶとたまっていくお湯加減が、抜群にちょうどいい。
いつの間に入れたのか、ラベンダーの入浴剤の香りが、ほのかに立ちのぼる。
――ああ、気持ちいい。
少しずつ、少しずつ、こわばっていた体の力が抜けていく。
そして、いつの間にか、体の震えは止まっていた。