「ずいぶんと、気が強くなったものだな。俺と付き合ってた時は、まだ何も知らない少女のような女だったのに」

落ちてくる胸を押そうとして前に出した両腕がつかまれて、頭の位置でベッドに押し付けられ、抵抗を封じられてしまう。

「どいてください。大声を出しますよ?」

「出してみればいい。このホテルは防音対策がしっかりしているから、いくら叫んでも外には聞こえないし、聞こえたところでここはラブホテルだ。誰も助けになんかこないさ」

理路整然と怖い事実を並べ立てられて、思わずうっと言葉を飲み込む。

「どいてください」

「そんなに怖い顔をしなくてもいいじゃないか。ずっと、君のことが忘れられなかったんだ」

「な、にを……」

あんな振り方をしておいて、どの口がいうのか。

「君だって、そうだろう?」

高崎さんは、そう言って耳元に口を寄せると囁くように言葉を続ける。

「女は、初めての男を忘れないものだ」

「っ!?」

心の中を羞恥心と嫌悪感がせめぎあい、それを押しのけて怒りがせりあがる。

それは、身勝手すぎる目の前の男に対する怒り。

そして、こんな男を一時でも本気で好きだった自分への怒りだ。