チーズ各種と、あらびきウインナー、ナッツ類などを見栄え良く盛り付けていく。

盛り付け始めてから五分ほどで、おつまみセットは完成した。

「後は、ワインを二本っと」

冷蔵庫から、ご注文のワインを二本とワイングラスを二つ取り出して、配ぜん用のワゴンのトレーの上におつまみ皿と一緒に乗せる。

コルク抜きとフォーク、それにナプキンを添えて、これでよし。

私はもう一度、不備がないかチェックして、手袋を外すとワゴンを押して1階上の3階にある305号室に足を向けた。

ワゴンを押しているため3階には階段ではなくエレベーターを利用する。

3階のフロアに着くと、そのまま廊下の一番奥にある305号室へとワゴンを押していく。

すると、前方のちょうど305号室のドアが『バタン!』と大きな音を上げて開き、身体のラインにフィットした黒いミニのニットドレスを身にまとった若い女性が速足でこちらへ、つまりエレベーターの方に歩いてきた。

私が顔を見ないように視線を伏せて、ワゴンを右側に寄せて歩く速度を緩めると、

「ったく、最低っのどケチ変態メガネ!」

その女性は、吐き捨てるように呟きを落としてエレベーターに乗り込み、少しきつめの甘い香水の匂いだけを残して、1階へと降りて行ってしまった。