どんなに丁寧にみがいても、歯みがきにかかる時間はたかが知れている。

五分後には、歯はツルピカに磨きあがった。

最後に口をすすいで歯ブラシを携帯コップの中に立て、私は鏡に映る自分の顔を見つめる。

――って、あれ?

なんだこれっ!?

私は、鏡に映る自分の首筋に散る、数個の小さい赤いアザに気づいた。

それが、いわゆる一般で言うところの「キスマーク」だと脳細胞が理解した数瞬後、隣で歯をみがき終わった祐一郎さんと、鏡越しにばっちり視線がかち合った。

ニッコリと満面の笑みを向けられて、思わず頬の筋肉が盛大にひきつる。

あれはぜっったい、私がキスマークに気づいたことに気づいた顔だ。

というか、このキスマーク、いったいどこまで続いてるの!?

さすがにこの状況で、服をめくって確認する根性は持っていない。

「もういいか?」

「はい……」

コクリとうなずけば、ニコニコ笑顔を浮かべた祐一郎さんは、再び私を抱え上げた。