カップルの放つ熱いオーラが、むんむんと狭い空間に充満する。

心拍上昇。

私の鼓動は、ドキドキと派手なダンスを踊った。

いくらエレベーターという個室の中でも、真っ昼間からキスシーンを演じているのは充分おかしい……と思う。

――私が乗ってきたの、気付いてるよね?

ううっ、いたたまれない。

でも気になるのが、人のサガってもので。

まさか直見する勇気はないけど、ついつい鏡になっている壁越しに見てしまう。

チラリ。

私が視線を向けた、その時。

まだキス真っ最中の男の方が、『チラリ』と視線を上げた。

ちょっと鋭い感じの綺麗な二重の黒い瞳と、鏡越しにばっちり視線がかち合う。

そして、時が止まった。

ついでに、私の息も止まる。