私は、吸い寄せられるように、水槽の前に歩み寄った。
「最初にそこへ目がいくあたりは、さすがというかなんというか……」
社長の愉快そうな呟きが聞こえたけど、それどころじゃない。
はじめは亀子さんの水槽かと思ったが、同じサイズの水槽でも中の住人が違った。
水深は約二十センチ。
透明できれいな水の中には、身体を斜めに漂わせるようにして鼻先だけを水面にだして眠っている、やたらとキレイな亀さんがいた。
基本的な甲羅の模様は、亀子さんと同じ。
でも、亀子さんよりは一回り小ぶりなサイズの、色白な美人さんだ。
甲羅はごく淡いペパーミントグリーン。
そこから伸びる頭や足、尻尾は一点の曇りもないピュアホワイト。
ミドリガメの特徴である耳の部分にある本来赤い模様は、淡いオレンジだ。
近づいてきた私の気配に気づいたのか、その白い亀さんは、ぱちりとつぶらな瞳を開けた。
瞳の色は、吸い込まれそうなダークレッド。
極上のルビーのように深く澄んだ色合いのその瞳に見つめられて、私は声もなく見入ってしまう。
この子、先天的に色素が抜けたアルビノの個体だ。
知識としては知っていたけど、実物を見たのは初めて。
なんて――
「きれい……」
思わずため息交じりの呟きを落すと、その亀さんは興味をひかれたようににょーんと首を伸ばした。
亀子さんが正統派のミドリガメなら、やや小ぶりのこの亀さんは神秘的な美しさをたたえた、まるで「深窓の姫君」のようだ。
「美人さんだね、あなた。お姫様みたい」
「確かにきれいだと思うが、オスだぞこいつ」



