「なんだ。さっきまでは、あんなに甘い声で名前を呼んでくれたのに、もう社長呼びに逆戻りか?」
ぎゅっと抱え込まれて、耳元に落とされる気だるげな低音ボイスに頭がクラクラしてくる。
なにこれ? なにこれ? なにこれーーーーっ!?
もしかして。
もしかしなくても、意識がないまま、社長としちゃったのっ!?
「うそ……」
信じられずに呆然と呟けば、愉快そうな声で「ほんと」と答えが返ってくる。
「ほんと?」
なの? とおそるおそる視線を上げれば、社長は「ぷっ」っと小さく吹きだした。
「ばーか。病人を襲うほど俺は鬼畜じゃない。まあ、何もしてないとは言わないが、最後まではしてないからな」
何もしてないとは言わないって。
さ、最後まで『は』していないって。
ということは、最後以外のことはしたって言ってるわけで。
その言葉の意味をそしゃくして、全身にカッと熱が走る。
何がどうしてこうなった?
一生懸命記憶をたどろうとするけど、悲しいかな何も思い出せない。
ああああう。
恥ずかしすぎて再びタオルケットを抱え込んで顔をうずめれば、社長はクスクスと楽し気に笑いながら完全に身を起こした。
「ほら、もう少し水分を取っておけ」と、ペットボトルのスポーツドリンクを手に持たされる。
さっきの甘い水の正体がこれだったのだと理解した瞬間、社長に口移しで飲まされたのだと気づいて、恥ずかしさが振りきれた。
ああ、私きっと、今なら恥ずかしさで死ねる。



