夢を見ていた。

カンカン照りの太陽の下で、亀子さんの入った水色バケツを抱えた私は、帰る家が分からなくて途方に暮れている。

体中が熱い。

熱くて、苦しくて、涙だけがぽろぽろと頬の熱を奪ってしたたり落ちていく。

お母さんと一緒に住んでいたあの家に戻ろうとするけど、道を歩いても歩いてもたどり着かない。

「亀子さん、家に帰れないよぅ……」

泣きながら、水色バケツの中の亀子さんに助けを求めれば、にょーんと首を伸ばした亀子さんがニッコリ笑って言う。

「茉莉ちゃん、大丈夫よ。ほら、あそこに新しいお家があるから」

亀子さんが水かきのある前足で、空の方を指さした。

「新しいお家?」

「そう、王子様が住んでいる白亜のお城!」

ついっと視線を上げればそこには――。