――なんだか、体がふわふわする。

ふわふわで、このまま眠れそうなくらいに、気持ちいい……。

昨夜も午前二時まできっちり仕事をして、帰宅後に荷造りをしていたら、いつもの三時間睡眠が一時間の仮眠になってしまった。

そのせいか立った状態だというのに、ふにゃりと体の力が抜けてくる。

すると、耳元に「ちっ」っと、低い舌打ちが落ちてきた。

なんで、舌打ち?

と、ぼんやりする頭でゆるゆると考えていたら、今度は体がフワリと宙に浮いた。

どうやら社長に抱き上げられたみたいだけど、眠すぎて状況がよく判断できない。

「ったく、自分が熱を出しているのも気づかないって、鈍感すぎるぞお前」

なんか、ひどいことを言われている気がする。

でも、ゆらゆら心地よい揺れに身を任せているうちに、少しずつすうっと吸い込まれるように意識が落ちていく。

「あまり、無理をするなよ、ばか……」

言葉とは裏腹に。

耳元に落とされるその声は、とても優しくて。

泣きたいくらいに優しくて。

その優しさに包まれながら、私の意識は完全に落ちてしまった――。