軽トラックを降りて、まずは母の遺影と貴重品がつまったリュックを背負ってから、両腕に亀子さんが入った水色バケツをだいじに抱える。

とりあえず、これだけは失くせない。

父も、大ぶりの旅行鞄を二つ肩にかけて「じゃあ、行こう」とアイコンタクトを取ったところで、妙に聞きなれた明るい声が後ろから飛んできた。

「おはようございます!」

驚いて振りむけば、そこには予想通りの声の主、スマイリー主任こと佐藤守氏が、さわやかスマイル全開で軍手をはめた白い手を振っていた。

そればかりか、その後ろには不動社長が立っている。

スマイリー主任は白いTシャツに茶色のチノパン、社長もなんとスマイリー主任と似たような白Tシャツにブラックのジーンス姿。

――うわっ、社長のTシャツ&ジーパン姿、激レアなんですけど!?

ふだんはかっちりとした背広姿ばかりの社長のラフなかっこうに思わず見とれていると、社長はニッコリ微笑んで父に軽く会釈をした。

「お久しぶりです、篠原さん。不動です」

父の記憶にあるのは、十七歳までのお隣の『祐兄ちゃん』。

その成長ぶりに目を見張っていた父も、相好を崩してニコニコと会釈を返す。

「久しぶりだね、祐一郎君。元気そうでなによりだ。咲子さんはご息災かい?」

「はい、おかげさまで母も元気にしております」

亡き妻の友人が元気に過ごしていると聞いて、父は「それはよかった」と笑みを深めた。