こんなに近くにいるのに、

いや、こんなに近くにいるから、

苦しくて、

せつなくて、

もっと、もっと、知りたくなる。

俺は、ためらいなく、茉莉の唇に自分のそれを重ねた。

初めは、優しく。

ついばむようにわずかに触れて、すぐに離れる。

おそらくは、無自覚なのだろう。

真っ直ぐ見上げてくる茉莉の瞳に灯るのは、艶を含んだ情熱の焔。

自分と同種のその熱を確かに感じて、これでもかと俺の理性が大きく揺さぶられた。

「っ、こら、そんな顔をしてると、本当に手加減できなくなるぞ……」

低い囁きと一緒に、キスの雨を降らせていく。

一降りごとに、深くなるその甘いキスの雨に自分自身も翻弄されながら、

俺は、身の内に広がる確かな幸福感を、かみしめていた――。