「俺からしてもいいけど、その場合、手加減はしないからな」

「て、手加減って……」

「さあ、どっちがいい?」

さすがに手加減なしのキスをすると宣言されては、腰が引けるのだろう。

わずかに視線をさまよわせた茉莉は、意を決したように、愉快そうに見つめる俺の顔に自分の顔を近づけてくる。

ドキ、ドキ、ドキと。

年がいもなく、鼓動がやけに早く感じた。

ちょん、と茉莉の柔らかい唇が俺の唇に触れた瞬間、身体に走った衝動をなんと呼べばいいのだろう。

それは、とてつもなく、甘い戦慄。

これで目的達成とばかりに反射的に身を引こうとした茉莉の身体を強引に引き寄せ、自分の懐にすっぽりと抱え込む。

息遣いさえ感じるほど近くに好きな女の、そう自覚したばかりの女の、愛おしい顔がある。

「せっかく自分から飛び込んできてくれたものを、そう簡単に逃がすか」

茉莉の耳元に落としたささやきが、暴走しはじめた感情を示すように低くかすれた。