食事をセッティングしたのは、展望レストランではなく、ふだんは結婚披露宴やパーティなどが行われるホールの一つ。
その一角を仕切って作られた、と言っても、ゆうに二十畳くらいはありそうな広い場所だ。
部屋の中央に設置されているのは、余裕で十人は座れそうな大きなテーブルセット。
テーブルには、透かし模様の入った、白いレース調のテーブルクロスがかけられている。
センターには、淡い色彩でまとめられた、美しい生花。
既に、三人分のテーブルウェアがセットされている。
俺たちが部屋に足を踏み入れたとほぼ同時に姿を見せたのは、このホテルの総支配人の後藤(ごとう)。穏やかな雰囲気を持ったロマンスグレーの男性だ。
もちろん彼は、俺がこのホテルのオーナー、谷田部彰成の息子だと知っている。
後藤は、人好きのする笑顔を浮かべて、ニコニコと挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ、祐一郎様」
「今日は、よろしく頼む。不備のないようにな」
「はい、万事承知しておりますので、ご心配なさらずにお任せ下さい。奥様も、間もなくお見えになるでしょうから、お二人とも席に付いてお待ちください」



