温かいが、熱いほどでもないことに、ホッとする。
「別に、熱はないようだな」
「あ、あ、ありませんっ。手が冷たいと熱があるときに測るのに便利でいいだろうって言う、一般論を言っただけです!」
「なら、いい」
慌てまくる茉莉の反応が、いちいち面白い。
もう少しかまってみたい気がするが、悲しいかな時間切れだ。
少し名残惜しく感じながら、茉莉の額に乗せていた手をひっこめた俺は、淡々と車をスタートさせる。
万年寝不足で、疲れがたまっているのだろう。
顔を真っ赤にしてうつむいていた茉莉は、五分も車を走らせると、こっくりこっくりと船をこぎだした。
せめて少しの間でも安眠できるようにBGMの音量をしぼり、なるべく静かな運転を心がけたさらに五分後。
接待の会場であるホテルロイヤルの地下駐車場に車を止めて様子を伺うと、茉莉は何やら夢を見ているらしく、誰かの名前を呟いた。
「亀子さぁん……」
その名が、子供のころに近所の夏祭りで一緒に掬ったミドリガメの名前だと瞬時に悟った俺は、思わずプッとふきだした。
ドレスアップしたシンデレラは、王子様ではなく、ペットのミドリガメと夢でランデブー中らしい。



