茉莉は、目の前に差し出した、俺の手のひらをポカンと見つめる。
「はい?」
「俺が運転した方が早いし、安全だ」
反論の余地がない事実をさらりと言ってのければ、茉莉はニッコリ笑顔で、バックから取り出した鍵を俺の手のひらにポンと乗せた。
「すみません、お願いします」
その時、わずかに触れた指先に走ったのは、じんんわりとした温もり。
茉莉は、驚いたように手をひっこめた。
俺は指先が人よりも冷たいらしいから、驚いたのだろう。
まあ、俺が温かく感じたってことは、茉莉は冷たく感じたってことだからな。
助手席にちんまりと収まった茉莉は、運転席で茉莉サイズに狭くなった椅子の位置を調整している俺に話しかけてきた。
「社長って手が冷たいって言われませんか? 熱が出たときとか、額に乗せたら気持ちよさそうですよね」
「……さっきから、赤い顔をしていると思えば、熱があるのか?」
「え? ああ、そうじゃないですけ……」
腕を伸ばして額に手を乗せれば、茉莉はびくりと身をすくませた。



