「急ですまないが、『これ』を、一時間以内になんとかしてくれないか?」
「お任せ下さいな。不動様のご依頼ですもの、きっちり纏めあげてごらんにいれますわ。不動様は、ソファーの方でコーヒーでもお飲みになっていてください」
「ああ、そうさせてもらうよ」
ウフフフと、女性店員は肉食の爬虫類めいた獰猛な笑みをその顔に浮かべて俺から茉莉に視線を移す。
蛇に睨まれたカエルのように微動だにできなくなった茉莉は、店員にがっしり腕を掴まれ、なされるがまま店の奥へと連行されていく。
さながら、BGMは、ドナドナだ。
そして遠くで上がる、茉莉のパニクる声。
「ちょっ、やめっ、なんなんですか、これは!?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと時間には間に合わせますからね。心配しないで任せて下さい」
しばらく賑やかに騒いでいたがさすがに観念したのか、店内は微かなBGMを残して静かになった。
俺は店のコーナーにある待合室のソファーに腰をおろすと、別の店員が用意してくれたコーヒーの香りをゆっくりと吸い込んで笑んだ。
――だいじな接待だ。
せいぜい頑張ってもらおうか、新人さん。



