「あ、いや、大丈夫です自分で歩けます、すみませんありがとうございます」
顔を真っ赤に染めた茉莉は、反撃をする暇を与えず早口でまくし立てながら、コメツキバッタの化身のようにペコペコと頭を下げる。
「なら、ちゃんと歩け」
「は、はいっ」
チラリと、腕時計に視線を走らせた俺は、茉莉にくるりと背を向け、すたすたと先に歩き出した。
目指すは、広い駐車場の最奥にある洋館風の一軒のブティック。
ここは、この界隈でも屈指の高級品を集めたセレクトショップだ。
展示されているのは、選び抜かれたハイセンスな洋服や服飾品の数々。
一歩煌びやかな店内に足を踏み入れれば、そこにはすでに女性店員がにこやかな満面の笑顔で待ち構えていた。
「不動様、いらっしゃいませ。ご連絡いただいたのは、こちらの方ですか?」
スレンダーだがメリハリの効いたプローポーションを持ったベテラン店員は、一部の隙もなく整えられた顔を俺と茉莉に向ける。
「ああ、そうだ」
俺と女性店員、向けられる二対の視線に不穏な空気を感じて、茉莉は思わずといった様子でじりじりと後ずさった。



