翌日、午後五時の少し前。

出勤してきた守を事務所でつかまえて、茉莉を俺の秘書的な立ち位置で仕事をさせることを説明していた。

何か言うかと思ったが、守は「じゃぁ、今日からルームメイクのローテーションを外しますね。とりあえず今日は俺がフォローして、明日以降は組みなおしておきます」とニコニコ笑顔を浮かべた。

「急で悪いが、よろしく頼む」

「了解です」

そこで止めておけばいいものを「うん。気持ちはわかりますよ。茉莉ちゃんを見てるとなごみますからね」と、よけいな一言を付け加えるのを忘れない。

「俺は、別に――」

なごみたいから茉莉を自分の側に置くんじゃない。

そう言いかけたとき、ちょうど茉莉が出勤してきた。

「おはようございまーす」

俺と守に向けられる笑顔は、やはりどこかぎこちない。

「あ、おはよう、茉莉ちゃん。今日から正社員だね」

守が笑顔で声をかけると、茉莉は緊張を解いた笑顔でうなずく。

「はい」

「いろいろと覚えることがたくさんあって大変だと思うけど、頑張ってね」

「はい。今まで色々教えてくださって、ありがとうございました」

茉莉がペコリと頭を下げれば、守は、カラカラと陽気な笑い声を上げた。