「って、あれ? そう言えば、美由紀の話って、なんだったんだろう?」

美由紀と別れてすぐ、そのことに気付いた。

自分のことばかり話して、美由紀のことを聞くのを忘れていた自分にちょっと舌打ちする。

電話で聞いてみようか?

スマートフォンをウエストポーチから取り出し、表示窓に視線を走らせると、

―11:20―

デジタル表示にギョッとする。

いけない。

高崎さんとの待ち合わせの時間がせまっている。

ホテル・ロイヤルはそれなりの格好をしていかないと、かなり浮く。

さすがにこの格好では、まずい気がする。

私は、急いで家に戻ると、ジーンズを濃紺の膝丈プリーツスカートに着替えて、メイクもそこそこに家を飛び出した。