「……もしかして、美由紀と何か話したのか?」
「ふふふ。ないしょ」
これは、十中八九、茉莉が『お隣に住んでいた茉莉ちゃん』だと美由紀から聞いて知ってるな。
「それで、メールの件はどうなんだ? あの時の女の子と篠原茉莉は同一人物なのか?」
「えー。一応守秘義務があるから、知らない人には教えられないなぁ」
からかいモードに突入した薫の声には、愉快そうな響きしかない。
「元ダンナだろうが」
「えー、今は赤の他人だからなぁ」
「じゃあ、雇い主の息子権限で」
「……へぇ。谷田部の威を借りちゃうんだ。ふーん」
別に本気で言ってるわけじゃない。薫のからかいモードにからかいモードで応戦しただけだが、薫には俺の言葉が意外だったらしい。
まあ、こんな軽口に谷田部彰成を引き合いにだせるだけ、俺の中でその存在が希薄になりつつあるということだろう。
だからって、間違っても尊敬なんぞしてやらんが。



