少し考えて、薫が仕事に使っているパソコン用メールに、用件を書いて送ることにした。
『二週間前に医務室に運んだ女の子の住所と名前が知りたい』と文字を打ち込んでから、さすがにこれでは単なるナンパ目的の危ない奴にしか見えないと感じて、文面を変える。
『俺のところで雇うことになった新人が、二週間前に医務室に運んだ女の子のようだ。名前は、篠原茉莉。〇〇市に在住の20歳だ。同一人物かどうかだけ、後でメールを投げておいてくれ。よろしく頼む。不動』
これでよし、と送信ボタンを押す。
明日の朝八時には出勤してすぐにメールチェックをするはずだから、遅くとも九時には返信があるだろう。
メールも送信したことだし、心おきなく残りの仕事を片付けよう。そう思ったとき、スマホの着信音が鳴り出した。
スマホの画面には『磯部薫』の名前が点滅している。
仕事中毒のあいつのことだ、最新の医学論文でも読みあさっていたのだろう。
「……はい、不動です」
「こんばんわー。傷心の元妻です」
やたらと明るい声が耳に響いてきた。こいつ、仕事のし過ぎでハイになってるな。
「起きてたのか」
「あなたもねー。で、なになに、もう新しい女の子に白羽の矢をたてちゃったの? それも20歳の、ええと茉莉ちゃん? 嫌ねー、このロリコンめ!」
薫は、愉快そうにくすくすと笑っている。



