社長室に残されたのは、俺と茉莉の二人きり。

落ちる沈黙が、重い。

そして、痛い。

守が、まるで、部屋の中の明るさや軽さの成分を全部持って帰ってしまったみたいな気がする。

『仏頂面してないで、何か言ってあげたら?』

脳内でリフレインする守の声に、眉根を寄せる。

何かって、何を言えばいいんだ?

ビジネスライクに『それじゃ、月曜からよろしく』と、笑って見せればいいのか?

いや、もう昔なじみの『祐兄ちゃん』だとバレているんだし、もう少し砕けた話題がいいのか?

その表情を伺い見ようと、チラリ、と下げた視線がばっちりとかち合って、茉莉は頬の筋肉を引きつらせている。

ビビらせてどうするよ。

そう思うが、九歳も年下の女の子と上手くコミュニケーションを取れる自信はない。

やっぱり、バラすんじゃなかったか。

仕事だけの関係なら、対応は楽なんだが。

思わず、右手で顔を覆って、『はーー』っと、大きなため息を吐きだす。

「あ、あの、面接日そうそう、ご迷惑をおかけして、すみませんでしたっ」

――いや、別に迷惑だとは、みじんも思っていないんだが。

これでもか、というくらい深々と頭を下げる茉莉の姿に、更に大きなため息を吐きだした。