ルームメイクの仕事は、客が帰った後の『部屋の掃除』。

回転率がさほど高くない昼間は、じっくりと隅から隅まで磨き上げる本格的な掃除をするが、回転率が高い夜は、最低限の掃除をする。

一部屋、四人一組のスタッフで、十分程度。

短時間で掃除をしなければならないが、だからと言って手を抜いていいわけじゃない。

不潔感が見えてしまったら、客は二度と足を運んではくれなくなるだろう。

ラブホテルの夜の掃除は『あくまで手は抜かずに、きっちり現状復帰』。これが基本だ。

ベッドメイクと、トイレ&洗面所周り、風呂掃除。それと備品の補充が主な仕事になる。

人員の割り当ては、ベッドメイクと部屋の掃除に二人、トイレと洗面周りに一人、そして風呂掃除に一人担当がつき、一気に掃除をしていく。

中でも、体力的にきつい仕事が風呂掃除だが、新人はまず1週間の風呂掃除を担当してもらうことにしている。

この段階で音を上げてやめる者もいるが、まあ、仕事を続けていく根性があるかどうか、初めにふるいにかけようということだ。

もし、茉莉が今日の三、四時間の風呂掃除で『もういやだ、できない』と音を上げるなら、それまでのこと。

合わない仕事を嫌々やるよりも、早々に見切りをつけてしまった方が、茉莉のためにもなるだろう。

そういう判断で、守に『特別扱いをするな』と指示を出したのだ。