茉莉との面接日は、美由紀から電話があった二週間ほど後のこと。

面接当日の午後三時。

面接時間の午後の四時まであと一時間になったころ、社長室で二号店建設に向けての資料を整理していた俺のスマホに、コンビニの方のローテーションに入っていた守(まもる)から電話がかかってきた。

守――佐藤守は、このホテルクロスポイントの業務全般の采配をまかせている俺の腹心の部下で、近所に構えている系列店のコンビニの店長を兼任している。

ついでに言えば、株式会社FUDOUの専務の役職に就いている。

高校生にしか見えないベビーフェイスの持ち主で人当たりはいいが、それだけの男なら俺は腹心の部下にはしない。

邪気のない笑顔でグサリと核心をついてきたりする、なかなか食えない男だ。

『社長、お待ちかねのお姫さまが、コンビニでお買い上げくださいましたよー』

『姫』とは、言うまでもない、篠原茉莉のことだ。

「よくうちに面接にくる人間だとわかったな」

今日新人女性の面接があることは話してあったが、さすがに詳しい個人情報までは話していない。面識もないはずだから、女性客がいたからと言ってそれが茉莉だと特定できるとも思えなかった。

『そりゃあ、緊張しきった顔で『株式会社FUDOU』の場所を聞かれれば、ぴーんときますって』

「ああ、なるほどね。それにしても、ずいぶん早いな」

面接の時間まではまだ一時間もある。

『面接だから早めに家を出てきたんでしょう。あんなかわいい娘(こ)を秘蔵してたなんて、社長も隅に置けないなぁ』

なんで、どいつもこいつも、茉莉を俺の恋愛対象に設定しようとするんだ?