「ホテルに着いたとき、総支配人さんが言った『奥様も、間もなくお見えになるでしょうから』って言葉を聞いたからです」
正直に言葉にすれば、社長は、理解不能のように眉根に深い皺を刻んだ。
「私、もしかしたら社長に奥さんがいるかもって考えて、そうしたらなんだか悲しくなって……」
さすがに説明不足だと感じて、しどろもどろで言葉を紡ぐも、イマイチうまくいかない。
でも社長は、納得がいったように、ニッコリと口の端を上げた。
「へぇ。なるほどねぇ」
自信満々なその笑顔に内包される、不穏な空気を察知して、思わず頬がひくっとひきつる。
「嫉妬してくれたわけだ。それで、俺が好きだと自覚したと」
いや。
なんだか、ご本人さまに改めて言われるとこう、むず痒いっていうか、こっ恥ずかしいっていうか、若干むかつくっていうか。
「……はい」
赤面しつつうなづけは、社長は、おもむろに身体をずいっと寄せてきた。
ぎょっと身を引こうとしたら、がっしりと両肩を掴まれて、至近距離で視線がからめとられる。



