今更ながらウインカーを上げた社長は、車を路肩に寄せて、ボソリと言った。
「……脅かすなよ、ばか。事故ったらどうする」
――ばか、って言われてしまった。
でも、私を見つめる社長の瞳はとても優しく見えて、私は胸の奥がギュッと苦しくなる。
「薫に、何か言われたのか?」
「薫さんに? さっきの『社長はツンデレ』以外は、特に言われてませんけど?」
「それはもういい。……で、どういういきさつで、俺が好きだって、結論に至ったんだ?」
問われて、改めて考えてみる。
きっかけは、そう。
総支配人さんの言った『奥様』というワード。
あれを聞いた瞬間に感じたショックと、あのモヤモヤーっとした気持ち。
あれは、たぶん、嫉妬だ。



