『それに』と、薫さんは笑みを深めて言う。
「不動祐一郎という人間は、一見とっつきにくく感じるかもしれないけど、ああ見えてけっこう情が深い所があるから。一度自分のテリトリーに入れてしまうと、めちゃ甘になるわよ。ああいうのを『ツンデレ』って言うのかしらね?」
クスクスと笑う薫さんの表情は、さっぱりとしていてかげりがない。
そのことに、ホッと安堵する。
――そっかぁ。
社長は、ツンデレさんかぁ。
笑いのツボを刺激された私も、つられて笑顔になった。
コンコン、
ノック音の後に、医務室に入ってきたのは、総支配人さん。
「お食事の方はどうされますか? 無理はしないようにとの、祐一郎さまからの伝言ですが……」
「あ、はい。大丈夫です。すぐに行きます」
シップの効果か、それとも心が軽くなったせいか。
そっと床に付いた右足首は、さほど痛みを感じない。
「ありがとうございました」
笑顔でお礼を言えば、笑顔で答えが返ってくる。
「どういたしまして。また、マフィンでも、食べにいきましょ?」
「はい、ぜひ!」



