「っ、げほげほげほげほっ!」
涙目になりながら薫さんの顔を見つめれば、彼女はニヤニヤと、少し人の悪い笑顔を浮かべている。
「ち、違います! ぜんぜんちがいます、別の人のことですよっ」
「別に隠さなくてもいいわよ?」
「で、でもっ」
「あの、エレベーターでのキスは、いわば『お別れのキス』だったの」
「……え?」
「めでたく離婚が成立したんで、じゃ、最後に別れのキスでも、って感じね」
「……は……はい!?」
「あ、別にどちらかが浮気したとか、そういうんじゃないのよ。まあ強いて原因を上げれば、二人ともお互いよりも仕事を取った、っていうところかしら」
『恋人』をすっとばし、
『奥さん』すらすっとばし、
分かれた『元妻』という座に座るその人は、私の反応をみやり愉快気に口の端を上げる。
「だからあなたは、その気持ちに罪悪感なんて持たなくていいのよ」



